法律的に美術を定義する試み

著作権とアート:影山幸一 08年2月│美術を定義し、そしてジャッジする──知的財産高等裁判所判事「飯村敏明」

いまだ著作権法に美術の定義はなく「美術の著作物には、美術工芸品を含む」(2条2項)とだけ規定にある。飯村氏は美術を厳密に定義することは困難としながらも、法律的に次のように美術を定義する試みを行なったことがある。「空間や物の形状、模様又は色彩のすべて又は一部を創出し又は利用することによって、人の視覚を通じて、美的価値を表現する技術又は活動」。コンセプチャルアートを理解している飯村氏らしく、空間・美的価値・活動といった言葉を使って美術を広くとらえようとしている点に美術に対する信頼を感じる。飯村氏はこの美術の定義を生み出した心境をこう語っている。「素晴らしいものを制作している人たちに対して、尊敬の念を何らかの形で受けとめなければいけないと思い、美術を狭めて定義することはできなかった」。