梅沢和木個展「エターナルフォース 画像コア」@frantic gallery

梅沢和木の描くイメージは、そのほぼすべてが、日常的にネットを徘徊することによって「収集」されたサブカルチャーの画像によって構成されている。私は以前、その収集作業の現場に立ち会ったことがある。無表情にモニターを見つめながら、高速で画像を選別し、黙々とマウスを操作しつづける姿は、いっさいの作家的な想像力を介さない「労働」と呼ぶにふさわしい。しかしそれ以上に、迷いのない彼の手つきは、その背後に存在しているであろう美意識の確かさを証明しているようであった。

梅沢は饒舌な作家である。彼はいつでも、自分の作品についてよく語る。

梅沢は自身の作品が「絵画」であることを誰よりも自覚している。しかし、彼の口から発せられるのは、従来の意味での美術的な言語ではない。その言葉はことごとく、「東方」や「ドラクエ」、「FF」、「らき☆すた」、「よつばと!」といった、サブカルチャーの固有名によって埋め尽くされているのだ。それは決して、サブカルチャーと絵画を類比させて語るといった、ありきたりな次元の話ではない。彼はストイックなまでに、自身の愛するゲームやアニメ、マンガの解釈のみを総動員して語り切ろうとしているのだ。そこでは新たな絵画論が試みられようとしている。

梅沢は自身の作品において、複数の異なるジャンルから引用されたイメージを、すべて、そのまま肯定しようとする。諸ジャンルへの愛に満ちた彼の手つきはしかし、同じ平面上に並べられたイメージたちを、もっとも激しいかたちでぶつけ合う。過酷な衝突の果てに本来の構造を粉砕されたイメージたちは、梅沢が設定する平面上で、まったく新しい絵画素として立ち現れているのだ。彼のブログに日常的にアップされているデジタルコラージュは、そのような絵画的語彙の生成するプロセスが惜しみなく開陳されていて、ある意味もっともスリリングな作品だと言えるだろう。近作において意欲的に取り組んでいるペインティングではさらに、これまで獲得してきた絵画的語彙を統合しようという意思が感じられる。それは新たな絵画を組織する試みなのである。 (黒瀬陽平)

frantic gallery
2009年11月27(金) - 12月19日(土) 日月祝休
開廊時間:12:00 - 19:00
レセプション:11月27(金)18.00 -
トークイベント:黒瀬陽平梅沢和木  12/5(土) 18:00 -


少し展示準備を覗いて来ましたが、個々の作品のレベルが確実に上がっています。また、展示についても閉じた箱のようなギャラリースペースを活かした現場での制作に近いことにもチャレンジするようで、相当に見ごたえの或るものになりそうです。直接的なアニメ、サブカル系ということで敬遠する方もいるかもしれませんが、単純に抽象絵画として見ても相当に強いエッジと強度を持った作品が散見されますので、是非足を運ばれることをオススメします。