みずみずしい西瓜事件

著作権とアート:影山幸一 08年2月│美術を定義し、そしてジャッジする──知的財産高等裁判所判事「飯村敏明」

「すいか事件」東京地裁 平11(ワ)8996号 平成11.12.15
原告がすいかの写真を撮影。被告もすいかの写真を撮影し、カタログに掲載した行為は、原告の著作権及び著作権人格権を侵害すると主張し、カタログ発行の差し止め及び廃棄、損害賠償、謝罪広告を請求した。判決は原告の写真と被告の写真とでは別のすいかを対象にして撮影したなど様々な相違点があり、類似しないと判断し、写真の著作権に基づいた原告の請求を棄却した。

被写体の選択と写真の著作権…判例(みずみずしい西瓜事件)紹介|著作権,コンプライアンス日記

東京地裁(平成11年12月15日)では、被写体の独自性は写真の創作性に関係がないと言ったのに対して、
東京高裁(平成13年6月21日)は以下のように、被写体も撮影方法等とともに創作の重要な要素と言ったのです。

「…写真著作物において,例えば,景色,人物等,現在する物が被写体となっている場合の多くにおけるように,被写体自体に格別の独自性が認められないときは,創作的表現は,撮影や現像等における独自の工夫によってしか生じ得ないことになるから,写真著作物が類似するかどうかを検討するに当たっては,被写体に関する要素が共通するか否かはほとんどあるいは全く問題にならず,事実上,撮影時刻,露光,陰影の付け方,レンズの選択,シャッター速度の設定,現像の手法等において工夫を凝らしたことによる創造的な表現部分が共通するか否かのみを考慮して判断することになろう。
しかしながら,被写体の決定自体について,すなわち,撮影の対象物の選択,組合せ,配置等において創作的な表現がなされ,それに著作権法上の保護に値する独自性が与えられることは,十分あり得ることであり,その場合には,被写体の決定自体における,創作的な表現部分に共通するところがあるか否かをも考慮しなければならないことは,当然である。
写真著作物における創作性は,最終的に当該写真として示されているものが何を有するかによって判断されるべきものであり,これを決めるのは,被写体とこれを撮影するに当たっての撮影時刻,露光,陰影の付け方,レンズの選択,シャッター速度の設定,現像の手法等における工夫の双方であり,その一方ではないことは,論ずるまでもないことだからである。…」