写真があまり売れない原因は、顧客が求める質の作品供給が少ないから

(アート写真最前線)写真が売れない日本市場潜在需要と供給のミスマッチ The Short Epic

日本では写真は売れない、という嘆きを写真家から聞くことが多い。確かにギャラリーの店頭でもその事実を実感している。実際に作品が定常的に売れるアーティストの数は決して多くないのだ。

欧米でもオークションで売買されるような高額な有名作品は市場のごく一部。中心はインテリアにも飾ることができる質が高い5万円から15万円くらいの価格帯の作品なのだ。日本には、難解なコンセプト、高額、大判サイズの現代アート系写真と、イメージ重視の低額写真の供給はあるが、明解なコンセプトと親しみやすいイメージを持った写真作品がほとんど市場に提供されていない。写真があまり売れない原因は、顧客が求める質の作品供給が少ないからなのだ

米国のアート写真市場も実は30年ほどの歴史しかない。初期はアンセル・アダムスなどごく一部作家のモノクロ作品しか扱われなかったそうだ。その後長い低迷期を経て、幅広い時代、分野の写真が扱われるようになった。新人作家でも普通に買われるようになったのは90年代以降になってからなのだ。

私が一番最初に買った美術作品は写真です。ある美術館での常設展に展示されていた写真に衝撃を受け、丁度同時期にあるギャラリーで開催されていた個展に足を運び、小さなプリントを購入しました。そういった経験があるため、私自身がアートを買うという条件の中で、作品を欲しいと思うときに写真だから特別に買い難いとは思ったことは無いような気がします。買い難いと思う理由は価格とのバランスと、自身の懐事情の問題です。
ですから、ここで言われている「写真があまり売れない原因は、顧客が求める質の作品供給が少ないから」という意見にはとても共感を覚えます。
ただし、写真を表現の手段として用いる作家が、売れるために親しみやすさを意識して作品を作る必要があるのかというと、それは作家が判断すべき課題だろうという気がします。私は親しみやすいことが、顧客が求める質の作品なのかという意見には素直に乗れません。